July 20, 2006

繭ができるまで24外と内の連続


外と内のあいだの空間をどうデサインするかをあれこれ考えるのは楽しい事です。デザインする時にいつも心がけているのは、外と内の連続性です。

天井と庇の軒を同じ高さにして、天井が外に向かってそのまま伸びていくようなデザインにしたり、壁もそのまま外に向かって伸びていくようなデザインにしたりします。

高温多湿の日本では庇や軒の出は、室内環境を保つためにも必要だと思います。これらを現代的なデザインの中に組み込む時に、外と内の連続性を演出するプラス要素として活かしています。

たとえば

ここは、床から天井いっぱいを窓にして、その窓を開けるとすべて壁の中に窓が収納され、巨大な開口部が現れるように設計したものです。天井と軒の高さをそろえ、壁と床の仕上げを外と中、同じものにして、連続性がとぎれないようにしています。


この家も天井と軒のつながりを大切にしています。
はめ殺しの窓の枠はなるべく目立たないようにして、天井が外に向かってすっきりのびているようにデザインしています。

繭は、これらの家より、ずっとローコストでラフなものなので、仕上がった感じは全く違う印象になると思いますが、外と内の連続性を感じるデザインを取り入れます。

しかし、現場はまだまだ動こうとしません。

17:56:15 | sakura | | TrackBacks

July 10, 2006

繭ができるまで23まだ、こんな

まだまだ工事が始まる気配もなく、まだこんな調子です。整地した時にできた土の山に草が生えて、こんもりした古墳のようになってしまいました。


15:11:00 | sakura | | TrackBacks

July 07, 2006

繭ができるまで22外側には夏野菜

外と内のあいだの空間をいかにして快適にするか。

繭が建つ場所は緑豊かなつくば市ではありますが、敷地の前は県道が走り、良い眺めではありません。オフィスの前は駐車場にしなければならないし、塀で囲むような広い敷地でもありません。

そこで、建物を外と内の空間の外側には、幕のような、ゆるく囲われるもので覆うことにしました。風通しが良く、夏はすずしく、冬は暖かく、さわやかな匂いがして、目も楽しませてくれ、そして食べられる..。

そうです、夏野菜で覆うことにしたのです。夏野菜は、葉が大きく成長も早いので、夏の暑い盛りにはしっかりと茂り、日陰をつくってくれるはず。窓の外に、ぶつぶつと丸く太ったゴーヤ、すらっとのびたキュウリ、赤やオレンジ色のトマトがぶらさがっている様子は、なんとも楽しげ。アサガオなどを混ぜても風情がありそうです。

夏野菜のつたを這わせるために、建物の外側にロープを張り巡らせます。縦に、斜めに、ランダムに。ちょうど、「繭」のような感じに。「繭」という名は、こんなことからつけました。

冬には夏野菜もすっかり枯れて、冬の陽ざしが内に入ってくるはずです。あまり空調機に頼らなくても快適空間ができると期待しています。



「繭」


20:51:29 | sakura | | TrackBacks

July 05, 2006

繭ができるまで21外と内のあいだ


かつての日本の家は、近くの山で樹を切り、茅や藁で屋根を葺き、地域の身近な材料でつくられ、また、開口部も大きく、まわりの環境との一体感が強かったのではないかと思います。

深い軒の下にある縁側は梅干しや大根を干したり、らっきょうの皮をむいたり、竹細工をしたりといったちょっとした作業場になり、かっこうのお昼寝の場所にもなります。その間、縁側は常にオープンで外の風が吹き抜けています。雨の日は、茅が幾重にも重なった分厚い軒の先から、雨が美しいしずくとなって落ちてくるのを眺めるのが風情です。防風林や生け垣や納屋に囲まれた広い庭と、雨風にさらされてほどよく角がとれた縁側の気持ちの良さ、そして、内はやわらかな畳、いぶした樹の匂い...。

こんな、住居を明治初期に日本を訪れたドイツの建築家ブルノータウトは絶賛したし、世界の巨匠の一人であるフランク・ロイド・ライトも、本人は日本の建築の影響を否定しながらも、影響を受けていたと言われています。アメリカでも、フランク・ロイド・ライトが活躍する少し以前から、カリフォルニアなどで、日本の建築が流行したようです。

しかし、現在は、前述のように豊かに庭を持ち、自分の山から樹を切って納屋に保管しておくことができる人は、極々わずかですし、茅葺きは、建築基準法により新築することができません。環境も、自然環境だけでなく安全面でも悪化していますし、生活も建築も多様化しています。

現代の生活と、環境のなかで、いかに自然との一体感が感じられるようにするか。縁側のような気持ちの良い空間をいかにしてつくるか。ということが、「繭」のテーマのひとつです。

縁側のような空間は、外部と内部をつなぐ空間と言えるでしょう。雨戸を開ければ外部と直接つながるけれど、屋根があって床もある。少し、内部的な性格の方が強いかもしれません。穏やかな周辺や庭の環境があってこそ引き立つ縁側空間に対し、「繭」では、「どちらかというと悪い環境である外」と「安心できる内」をつなぐ「外と内のあいだ」という性格づけになるのかもしれません。

「繭」は、必要最小限ー正確に言えば「繭の内部」は必要最小限のぎちぎちの小ささになっていますが、「外と内のあいだ」の空間が、実は無意識のうちにも結構な面積をとってしまっています。一見無駄とも思われがちな、「外と内のあいだ」が私たちにとっては重要なのですが、それは、自然との一体感を感じていたいという気持ちの表れなのだと、気づきます。




10:52:03 | sakura | | TrackBacks